適応障害

焦りや不安…イライラ、
食欲低下・過食がある
適応障害

焦りや不安…イライラ、食欲低下・過食がある適応障害適応障害とは、自分のいる環境への適応がうまくいかず、ストレスにより心身に影響が及び、生活に支障をきたしている状態を指します。焦り・不安、イライラが強く現れたり、食欲低下・過食が現れたりと、その症状はさまざまです。
未だ、適応障害でお悩みの方を「甘えだ」「性格に問題がある」とする風潮が残り、受診・治療に至らないケースが少なくありません。
特に大きく環境が変わった時など、多少なりとも多くの方がストレスを感じますが、それにより心身への影響、生活への支障が出ている場合には、医療機関での治療が必要です。
適応障害に対する治療を行わずにいることで、うつ病を発症することもあります。

適応障害って
どんな症状がでるの?

適応障害は、症例ごとにさまざまな症状が見られます。
明らかなストレス要因(環境の変化や人間関係)にうまく適応できず、心身のバランスを崩し、生活に支障をきたした状態です。

精神症状

  • 焦り、不安、恐怖感
  • イライラ
  • 抑うつ気分
  • 意欲低下
  • 思考力低下

身体症状として

  • 食欲低下、食欲亢進、暴飲暴食
  • 吐き気
  • 倦怠感、疲労感
  • 不眠、過眠
  • 動悸、めまい
  • 頭痛、頭が重い感じ
  • 腹痛、下痢
  • 多汗

行動に関する異常

  • 出勤前に症状が強く遅刻や早退、欠勤をしてしまう
  • 勤務中に症状が強く、仕事に支障をきたす
  • 休日は症状が明らかに軽減し、自分らしく過ごせる時がある

適応障害って
ストレスが原因?

適応障害の原因は、ストレスです。
何にどんなストレスを感じるか、またどれくらいのストレスで適応障害が起こるかは、人それぞれです。
適応障害の原因となるストレスとなりうる因子としては、仕事・家庭・恋愛・学校などにおける人間関係、抱えきれない仕事量、その内容が多くを占めます。また仕事や学校の場合には、その評価・成績などが関係してくることもあります。
その他、経済的問題、ご自身やご家族の病気およびその治療が大きなストレスとなることもあります。

適応障害の診断基準

適応障害の診断において重要となるのが、うつ病との鑑別です。うつ病もまた、ストレスを原因として発症し、心身に影響が生じることがあるためです。
その上で、以下のような基準に基づき、診断します。

  1. 明らかな社会的・心理的ストレスに対する症状が出ており、そのストレスにさらされて3カ月以内に発症している
  2. 出現している症状の程度が、通常のストレスに対する正常な範囲を超えている
  3. 社会的、または職業・学業上の機能障害がある
  4. 原因と思われるストレスを解消すれば6カ月以内に症状が治まる
  5. 他の精神障害がない

適応障害では、その多くで不安気分、抑うつ気分、身体的症状が見られます。特に、気分の落ち込みを感じる、なんとなく元気が出ないという方が目立ちます。

適応障害の治し方

患者さまとのお話の中で、強いストレスを引き起こしている原因を探り、絞り込みます。治療では、その原因を改善・解消することで、ストレスと症状の軽減を図ります。

認知行動療法

認知の歪みを修正することで、患者さまの行動を変容させる治療を「認知行動療法」と呼びます。
適応障害においては、症状を引き起こしているストレスを特定し、その因果関係を認識した上で、ストレスに接する時にどのような対応をとるべきか学習・訓練します。
これにより、いざそのストレスに接した時の症状が、徐々に軽減することが期待できます。

薬物療法

適応障害においては、薬物療法は補助的な治療となります。
その症状に合わせて、睡眠導入剤や抗不安薬を処方します。なおいずれの薬を使用する場合も、基本的には数カ月の限定的な処方とし、薬への依存を防ぎます。

適応障害は甘えではない…
かけてはいけない言葉は?

多くの精神障害がそう言われるように、適応障害は決して「甘え」によって起こるものではありません。
また、ご家族をはじめ、その患者さまの近くにいる方が良かれと思ってかけた言葉が、逆に患者さまを落ち込ませたり、場合によっては症状の状況・症状の悪化へとつながるおそれもあります。
健康な人にも言えることですが、親密であるほど、言葉は大きく影響します。まわりにいる人が控えるべき言葉の例を、ここでご紹介します。

「甘えじゃないの?」

控えるべき言葉として、最近はよく知られるようになりました。しかし、やはりつい口に出してしまうことがあるようです。発言者の意図は、「あなたならやればできるはず」という想いであることが多いものの、適応障害の方にとっては効果がない、または逆効果になります。
頑張ってどうにかなるという段階ではなく、追い詰められている状況であることを理解し、寄り添うことが大切です。

「もっと大変な人もいるんだから」

「辛い」という感情は、非常に主観的なものです。また、ストレスへの耐性も人によって差があります。誰かとの比較ではなく、その患者さまが「辛い」と感じていたら、それは間違いなく「辛い」のです。

「元気を出して」「頑張って」

これらはもちろん、勇気づけるつもりで発せられる言葉ではあります。しかし、元気を出そう、頑張ろうということは、患者さまご本人が誰よりも思っていることであり、一方でこれ以上元気を出せる・頑張れる状況にもないのです。こういった言葉をかけられると、患者さまは「これ以上何を頑張ればいいの」という気持ちになってしまいます。

「仕事(学校)はどうするの?」

出社(登校)できない状態になると、ご家族の方もさぞ不安になるかと思います。しかし、ご本人にはそういった未来の話を考える余裕はありません。またそういった話をすることが、ひどく辛い状況にあります。
まずは心身を休めることを最優先してあげてください。